ライマンのシューマン追悼作品日本初演(2012年5月、下野竜也指揮 読響定期)

いささか古い話で恐縮ですが、どこかに記録として残しておきたいので、ここに簡単な記録を。

5月の読響定期(5/15 下野竜也指揮)、6月のN響定期(6/20, 6/21、Bプロ、アシュケナージ指揮)と2か月続けてサントリーホールでシューマンのヴァイオリン協奏曲が取り上げられ、「もうこんなことは私が生きている間にはないかも?」と思いつつ聴きに出かけました。(ヴァイオリン独奏はそれぞれ三浦文彰、アナ・チュマチェンコ。若手と大家の対比ができたのもおもしろかった。)

読響のプログラムはオール・シューマンのようでオール・シューマンではない、ちょっと変わったプログラムでした。(N響の方は純然たるオール・シューマン・プログラム) 下野さんがこの読響定期で1曲目に取り上げたのはベルリン生まれの作曲家アリベルト・ライマン (Aribert Reimann, 1936- ) による「管弦楽のための7つの断章 -ロベルト・シューマンを追悼して-」という14~15分くらいの短い作品。これが日本初演でした。

開演前に下野さん自身によるプレトークがあり、ライマンのこの曲について簡単な解説がありました。この曲は、シューマンの、いわゆる「天使の主題による変奏曲」へのオマージュであるとの紹介と共に、ピアノ演奏による「天使の主題による変奏曲」の一部が録音で紹介されました。

※この「天使の主題による変奏曲」とよく似た旋律がヴァイオリン協奏曲の第2楽章にも使われています。

ライマンの作品を聴いた私の感想なのですが、一言で言ってしまえば「恐ろしい曲だった」ということに尽きます。断片的に演奏される美しく静かな「天使の主題」と、混沌かつ騒然とした不協和音の大音響の対比はまるでシューマンが晩年に苦しめられていた「あの耳鳴り」を思わせたからです。フルオーケストラによるけたたましい「耳鳴り」の響きの中で天使の歌が清らかに歌われている…それはまるでシューマンがライン河に飛び込む直前に聴いていたかもしれない幻聴のようでした。このライマンの後で演奏されたヴァイオリン協奏曲、その第2楽章の美しかったこと。(いや、これもある意味では「恐ろしい曲」と言ってもよいのかもしれませんが…)

定期演奏会の曲目解説などを掲載した読響の冊子「月刊オーケストラ」の2012年5月号に渡辺和さんによる作品解説と、長木誠司さんによる「アリベルト・ライマンとは誰か?」という特集記事が掲載されています。(読響はライマンのオペラ「メデア」と「リア王」の日本初演に参加する予定だそうです。) この冊子、バックナンバーの取り寄せが可能かどうか定かではありません。(冊子本体にも、読響のウェブサイトにも何も書かれていないため)

ご参考までに、以下にライマン関係のリンクを載せておきます。

アリベルト・ライマン (Wikipedia / 日本語)

Aribert Reimann: Sieben Fragmente für Orchester in memoriam Robert Schumann (1998) (Wikipedia / ドイツ語)

Aribert Reimann: Sieben Fragmente für Orchester in memoriam Robert Schumann (1998) (SCHOTT / 英語)


※ついでなので、本文で触れた読響とN響の公演記録を掲載しておきます。

●2012年 5/15(火) 19:00開演
サントリーホール

読売日本交響楽団 第515回定期演奏会

下野竜也 (指揮)
三浦文彰 (ヴァイオリン)

ライマン / 管弦楽のための7つの断章 -ロベルト・シューマンを追悼して- (日本初演)
シューマン / ヴァイオリン協奏曲 ニ短調

(ソリストのアンコール)
パガニーニ / 「パイジェルロの水車屋の娘から 我が心もはやうつろになりて」による変奏曲 op.38

シューマン / 交響曲 第2番 ハ長調 op.61

●2012年 6/20(水)・6/21(木) 19:00開演
サントリーホール

NHK交響楽団 第1732回定期公演 (Bプロ)

ウラディーミル・アシュケナージ (指揮)
アナ・チュマチェンコ (ヴァイオリン)

(オール・シューマン・プログラム)
「マンフレッド」 op.115 序曲
ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
交響曲 第4番 ニ短調 op.120

※初日の模様はNHK-FMで生放送されました。
初日の演奏会は8/19(日)にNHK-BSプレミアムで放送される予定です。

N響放送予定