シューマンの肖像画とシューマン夫妻の自筆譜/クララとブラームスによるモーツァルト K.466 のカデンツァ

ツイッターで以前から話題になっていたので既にご存知の方も多いかと思いますが、高性能スキャナ&インクジェットプリンタを用いた精密なデジタル複製画を販売していらっしゃるBibliopoly(ビブリオポリ)さんにて、シューマンの肖像画シューマン夫妻の自筆譜が販売されています。シューマン夫妻以外の作曲家の肖像画や自筆譜も多数紹介されています。ラインナップは頻繁に更新されていますので、時々、アクセスしてご覧になると楽しいでしょう^^

Bibliopoly(ビブリオポリ)さんのウェブサイト


現在、掲載されているのは以下の作品の自筆譜です。

●ロベルト・シューマン
「7つの歌」 (Sieben Lieder) op.104 より
[テキスト/エリザベート・クールマン Elisabeth Kulmann (1808-1825)]

第2曲 "Viel Glück zur Reise, Schwalben!"
檜山哲彦さんの訳では「元気な旅を!つばめさん」

YouTubeで試聴(リンク切れの場合があります)[リンク切れ]

第3曲 "Du nennst mich armes Mädchen"
※同じく檜山さんの訳では「貧乏な娘(こ)と呼びますが」

YouTubeで試聴(リンク切れの場合があります)[リンク切れ]

(試聴用のリンクをクリックするとユリアーネ・バンゼの同じファイルの各曲の該当箇所が開きますが、YouTubeですのでリンク切れの場合もあります。)
※動画が削除されていましたのでリンクを削除しました。(2016.10.30)

●クララ・シューマン
モーツァルト / ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466 にクララが作曲したカデンツァ(第1楽章、第3楽章)のうち、第1楽章のカデンツァ。

IMSLPで楽譜のダウンロード

※IMSLPの同じページからブラームスによるカデンツァ(自筆譜含む)もダウンロードできます。また、ブラームスのカデンツァの自筆譜はBibliopolyさんのウェブサイトでも紹介されています。

なお、クララのこのカデンツァは1891年頃に出版されたとのことですが(*1)、その出版準備中、クララは「ずっと自分の作として弾いてきた」(*2)このモーツァルトK.466へのカデンツァがブラームスに由来していることに気がつき、「突然罪の意識にとらわれた」(*3)とのこと。このまま出版したものか否かをブラームスに手紙で相談したところ、ブラームスはクララにすばらしい返信を書きました。曰く、自分の最良の旋律はクララに由来している、自分ひとりだったら美しいものは思いつかないのだから、自分はクララに感謝しなければいけない…と。(*4)

(註)
*1)…ナンシー・B・ライク『クララ・シューマン 女の愛と芸術の生涯』(高野茂訳、音楽之友社、S62)、巻末作品目録。
*2)…同 p.390。
*3)…同 p.390。
*4)…同 p.391。


このK.466へのブラームスのカデンツァ(第1楽章)とクララのカデンツァ(第3楽章)を聴くことができるおもしろいCDがあります。

ミヒャエル・リッシェ Michael Rische (ピアノ)
ハワード・グリフィス Howard Griffiths (指揮)
ケルンWDR交響楽団 WDR Sinfonieorchester Köln
Profil [PH09006] (2008年録音)

コンチェルト自体はソリストのリッシェのカデンツァを用いて録音されていますが、これとは別にブゾーニ、ブラームス、フンメル、ベートーヴェン、クララ・シューマン、フランツ・クサーヴァー・モーツァルトの各カデンツァがひとまとめに続けて収録されています。

タワーレコード
HMV
NML
Spotify
iTuens Store


●補足 (2012.08.18)

K.466 のクララとブラームスの自筆譜は現在、米国国会図書館に収蔵されており、概要についてはウェブサイトで確認することができます。ナンシー・B・ライクによれば、ブラームスの自筆譜にはクララが「自分で使用した楽句を確認するために書いたメモ」(*)も含まれているのとこと。

(*)…前掲書 p.404 の註8。

以下に関連リンクを掲載します。

米国国会図書館 Library of Congress Home

米国国会図書館 Performing Arts Encyclopedia

クララ・シューマンによるモーツァルト K.466 へのカデンツァ (浄書、草稿)

ブラームスによるカデンツァ集 (BWV 1052, K.491, K.453, K.466)

なお、クララはこのモーツァルトのK.466へのカデンツァのほか、ベートーヴェンのピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37、第4番 ト長調 op.58 のためにもカデンツァを遺しています。手元の資料では自筆譜の所在は不明とされていますが、過去に出版されたこともあり、このうち第3番についてはクララの孫弟子にあたるソロモンのCDで聴くことができます。(メンゲス指揮フィルハーモニア管弦楽団 1956年録音、EMI など) 楽譜はIMSLPからダウンロードすることもできます。

・ IMSLP - ベートーヴェン / ピアノ協奏曲 (クララ・シューマンによるカデンツァ)
  - 第3番 ハ短調 op.37
  - 第4番 ト長調 op.58

最後にクララ自身の協奏曲の関連リンクもご紹介。

・ IMSLP - ピアノ協奏曲 イ短調 op.7
・ IMSLP - ピアノ協奏曲のための断章 ヘ短調 (1847)

・ ルーシー・パールハム(ピアノ)
 バリー・ワーズワース指揮 BBC Concert Orchestra

・ ナクソス盤

・ 室内楽版(ピリオド楽器)

※このCDの関連記事 ここ とか ここ とか ここ