1月のシューマン2題 グシュルバウアーとブリュッヘン

 さて、あれこれの諸事に煩わされているうちに、あっという間に2月も後半に突入してしまいました。このニュース欄の更新に手がまわらず、いささか情報が古くなりましたが、「1月のシューマン」について少し。

 昨年はシューマンの没後150年記念ということで、特に命日の7月29日を中心にシューマンの興味深い公演をたくさん聴くことができました。そのシューマン年も過ぎ去り、年が改まった1月も後半に入ってから、先の「記念年」を髣髴とさせるような(そして、私が「これは、これは…」と感じた)シューマン公演がありました。

 まず、読売日本交響楽団の定期演奏会、テオドール・グシュルバウアー氏の指揮によるオール・シューマン・プログラム。(1/22(月) サントリーホール)(※ 1) この公演ではオーケストラ伴奏による「悲劇」が取り上げられました(※ 2)。 この曲に関しては、私自身、オーケストラ版を聴いたことがなかったため、興味津々で出かけました。この「悲劇」では「ペリ」や「うたびとの呪い」のような作品で聴くことのできる、シューマン特有のオーケストラと人間の声のやわらかなやりとりが繰り広げられ、まさに夢のようなひとときでした。また、交響曲を含め、この演奏会では全体的にオーケストラが厚く重くよく鳴っていたと思いますし、とても自然なアプローチでした。

 もう1つの公演は新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会。フランス・ブリュッヘン氏によるシューマンの交響曲第4番「初演版」。(1/26(金),27(土) すみだトリフォニーホール)(※ 3) ブラームス校訂による1841年版ではなく、初演時の稿による1841年版です(ややこしいですね^^)。両翼配置、ピリオド奏法を取り入れた演奏。ピリオド・オーケストラ風の明るく透明な響きと軽快な流れはこの版にとても合っていましたし、第4楽章の木管群のハーモニーの美しさは格別でした。 (そしてプログラム後半のベートーヴェンの「プロメテウス」は想像を絶する名演でした…)

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※以下、この2つの公演の記録です。

●1/22(月) サントリーホール

読売日本交響楽団 第456回定期演奏会

(指揮) テオドール・グシュルバウアー
(ソプラノ) 堪山貴子
(テノール) 高橋淳

(オール・シューマン・プログラム)
歌劇 「ゲノフェーファ」 op.81 より ~ 序曲
交響曲 第1番 変ロ長調 op.38 (春)
悲劇 (ハイネの詩による) (※)
交響曲 第2番 ハ長調 op.61

(※)「バラードとロマンス 第4集」 op.64 の第3曲の作曲者自身によるオーケストラ伴奏版。

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●1/26(金)
●1/27(土) すみだトリフォニーホール

新日本フィルハーモニー交響楽団
第412回定期演奏会 「夢の再共演」

(指揮) フランス・ブリュッヘン

シューマン / 交響曲 第4番 ニ短調 (初演版) op.120
ベートーヴェン / バレエ音楽 「プロメテウスの創造物」 op.43

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(※ 1)2003年12月の定期演奏会でもグシュルバウアー氏の指揮によるオール・シューマン・プログラムの公演が行われました。

(※ 2)「バラードとロマンス 第4集」 op.64 の第3曲の作曲者自身によるオーケストラ伴奏版。曲は3つの部分から成り、(1)若者が惚れた娘に駆け落ちしてくれと懇願する(駆け落ちしてくれなかったら死んでやる) (2)2人は駆け落ちをした→2人とも最後には死んでしまった(不幸な結末) (3)墓場に立つ菩提樹の、その木の下で若く(新しい)恋人たちが泣く……。この曲のCDですが、オーケストラ伴奏版については情報がほとんどなく、入手はとても難しそうです。ピアノ伴奏版は探せばいろいろと見つかります。(たとえばハイペリオン盤

(※ 3)ブリュッヘン氏は2005年2月に新日本フィルを、というか、日本のオーケストラを初めて指揮。この時もシューマンを取り上げました

ライス国務長官演奏のシューマン

※末尾に追記あり:音声ファイル、動画のリンク切れ部分を削除、YouTubeへのリンクを追記しました。 (2016.02.02)


 最近、TBSの「CBSドキュメンタリー」を見ていなかったので気がつきませんでしたが、アメリカのテレビ局CBSの "60 Minutes" で珍しいシューマン演奏が放送されたようです。

 音楽教師を母に持つアメリカのライス国務長官は音楽と縁の深い人物として知られています。 "Condoleezza" というファーストネームは音楽用語(イタリア語の "con dolcezza" )からつけられたそうですし、若い頃はプロのピアニストを目指して音楽の勉強をしていた時期もあるそうです。また、政治家となった今でも、時間があればピアノでブラームスなどを弾いていることは日本でもニュース映像などで度々紹介されてきました。そんな彼女が、昨年、アメリカの有名なドキュメンタリー番組 "60 Minutes" に出演した折、密着取材の中で仲間とシューマンのピアノ五重奏曲の第1楽章を演奏している様子を披露しました。 (「ライス国務長官とシューマン」という取り合わせが意外でしたので、このニュース欄に取り上げた次第)

 CBS(アメリカ)での放送は昨年9月24日、TBS(東京)での放送は2か月遅れの11月22日深夜(23日)だったようです。私は放送を見逃してしまいましたが、たまたまダウンロードして溜め込んでいたPodcastのバックナンバーファイル(映像なしの音声ファイルのみ)にこの密着取材の模様が含まれていました。探したら映像もWEB上にありました。 (残念ながら、映像はPodcastとして配信されていません) CBSが公式にアップロードしている映像はPodcastより長めの編集、演奏もたっぷりめです。

 世界有数のエネルギッシュな政治家として知られるライス国務長官の意外な一面が見られる上、しかもシューマンの室内楽を演奏するという渋さ…。興味深い映像です。

●以下のURLから音声と映像を視聴できます。

※音声ファイルのみ

CBS Podcast

Yahoo! : 60 Minutes: Condoleezza Rice

※映像

Yahoo! "60 Minutes"
(この中の "Roll Over Beethoven" というファイル)

直に開く時は この辺り あるは この辺り

冒頭のCMはスキップできない模様…

※ Podcastと同じ内容の映像付きのものは YouTubeで "Condoleezza Rice, Piano" と検索すれば今なら見られます。(ここの4分28秒くらいから。ファイルが削除されている場合もあります) 画質・内容ともに Yahoo!の映像ファイルを推奨いたします。

(追記 2016.02.02)

既に上記のリンク先のファイル類はすべて削除されていますが、YouTubeにインタビュー映像がアップされていました。(こちらもいずれ削除される可能性があります)

ライス氏がシューマンを演奏している様子は4分28秒あたりからはじまります。

YouTubeのサイト上で動画を再生する場合はこちらのリンクから。
(4分28秒過ぎからはじまります)

没後150年記念特集

諸事情から作業時間が取れず、予告からずいぶんと時間があいてしまいましたが、「シューマン没後150年の命日に」(8月19日付当ニュース記事)でご紹介した、TAKUさんから送っていただいた写真の数々と、写真に添えられたコメントを「没後150年記念特集」の第1弾としてまとめ、当ウェブサイトに掲載させていただきました。TAKUさん、ありがとうございました。

→ 没後150年記念特集 「2006.7.28~29 エンデニヒ~ボン」 (by TAKUさん)

※第2弾はこれからまとめる予定です。公開は年明けを過ぎてからになると思います。

【のだめ】 ピアノ・ソナタ 第2番 のCD

探している方がいるかもしれませんので、シューマンのピアノ・ソナタ第2番のCDの情報を取り急ぎ掲載いたします。

※このサイトの性格上、入手困難盤も含まれています。また、大急ぎで調べて書きましたので、間違いなどもあるかもしれません。

※一部、情報を追加しました。 (2007.11.11)

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スヴャトスラフ・リヒテル

輸入盤/EMI。

「リヒテル シューマン ソナタ 2番」でアマゾン(JP)を検索。

"Richter Schumann Sonata" でアマゾン(JP)を検索。

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■ブラウティガム、エル=バシャ、伊藤恵

※CDのほか、比較的最近(といってもブラウティガムは2年ほど前になりますが)、私自身がリサイタルでシューマン演奏を聴いて深く感じるところのあった3人のピアニストです。CDもすばらしいと思います。

※当サイト内の関連記事:「ブラウティガムとエル=バシャ シューマン ソナタ2番と3番」

ロナルド・ブラウティガム

Ronald Brautigam
rec. 1991/04, Utrecht
GLOBE [GLO 5062]

輸入盤。入手は難しいかもしれませんが、アマゾン(JP)では一応、オーダー可能になっているようです。(発送はUKからのようですが)

アブデル・ラーマン・エル=バシャ

Abdel Rahman El Bacha
rec. 1993.09, Theatre de Poissy
FORLANE [CD 16722]

輸入盤。入手は難しいかもしれません。現時点ではアマゾン(JP)は在庫切れになっているようです。

伊藤 恵
「シューマニアーナ 2」

Kei Itoh
rec. 1988/12/21-23, Misato Public Hall
旧盤 fontec [FOCD2520]
新盤 fontec [FOCD9322]

国内盤。入手自体はそんなに難しくはありませんが、マイナーレーベル扱いですので、小さなショップの場合はレーベル自体の取り扱いがないかもしれません。ネットで買うことに抵抗がある場合は近所のお店に頼んで取り寄せてもらうこともできます。

(旧盤)

※ジャケ写

※上のディスクは旧盤です。
下のディスクが2007年10月に再発売された新盤です。

(新盤)

※ジャケ写

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■そのほか、思いついたところで…

セルジオ・フィオレンティーノ

Sergio Fiorentino
rec. 1995/10/14, Konzertsaal Siemensvilla, Berlin
APR [APR 5560]

輸入盤。入手が難しいかもしれません。現時点でアマゾン(JP)に在庫が1点ありました。(発送はUKからのようです。)

マレー・ペライア

Murray Perahia
rec. 1986, Vanguard Studios, New York City
SONY CLASSICAL

カップリングはシューベルトのD959(ソナタ第20番)。

国内盤。

輸入盤。

ルース・スレンチェンスカ

Ruth Slenczynska
rec. 1999/10/05-07, Fernleaf Abbey, Columbus, Ohio
IVORY CLASSICS [71004]

輸入盤。

エリソ・ヴィルサラーゼ

Elisso Wirssakadze
rec. 1973/12/16
Tchaikovsky-Konservatorium Moskau
LIVE CLASSICS

輸入盤。

日本語解説付きのものは、アマゾン(JP)では現時点では在庫切れのようです。

日本語解説の付いていない方はとりあえず在庫があるようです(発送はUSから)。

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■とても有名なCD

マルタ・アルゲリッチ

DG/国内盤。
アマゾン(JP)では在庫切れだそうです。

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■私はまだ聴いていませんが(比較的最近の発売なので、手に入れやすいかもしれない)話題のピアニストのCD

● ラファウ・ブレハッチ
(国内盤/ビクターエンタテインメント)

※昨年のショパン・コンクールの覇者

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■その他いろいろなCDを探してみる

シューマン ピアノ・ソナタ 第2番 でアマゾン(JP)をざっと検索してみる。

アンダンテと変奏曲 (室内楽版) のCD

 これは事前に予告していた記事ですが、しばらく取り込んでいたために更新が3週間ほど停止してしまいました。
 さて、前の記事で予告した通り、「アンダンテと変奏曲」(室内楽版)のCD情報をまとめてみました。

【ディスクの一覧(簡易版)】

※以下は手元のディスクの一覧です。
(録音年順に並んでいます)

*1968年録音

pf. Toni Grünschlag
pf. Rosi Grünschlag
hrn. Walter Tomböck
vlc. Richard Harand
vlc. Günther Weise

1968/03, Vienna, CENTAUR [CRC 2635]

 ヤン・ラディスラフ・ドゥシークの「2台のピアノとオーケストラのための協奏曲 変ロ長調」とのカップリング(ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団、Paul Angerer 指揮)。

*1979年録音

pf. ローベルト・マーイェク Robert Majek
pf. マリオ・ヴェンツァゴ Mario Venzago
vlc. ラーマ・ユッカー Rama Jucker
vlc. ケーティ・ゴール Kaethi Gohl
hr. フランチェスコ・ラセッリ Francesco Raselli

1979/05/25, ACCORD [201572]

 近年、指揮者として積極的にシューマンのオーケストラ作品を録音しているヴェンツァゴがピアニストとして参加している録音。 この ACCORD [201572] のカップリングは5つの民謡風の小曲 op.102歌曲集「女の愛と生涯」

 現時点ではアマゾン(日本)では在庫切れのようですが、お探しの方は折をみて検索してみてください。

Majek, schumann

*1994年録音

pf. マルタ・アルゲリッチ Martha Argerich
pf. アレクサンドル・ラビノヴィチ Alexandre Rabinovitch
vlc. ナターリャ・グートマン Natalia Gutman
vlc. ミッシャ・マイスキー Mischa Maisky
hrn. Marie-Luise Neunecker

1994/09/18, live
Concertgebouw, Nijmegen, Holland

EMI [5 55486 2] (2CDs)

 現時点では、比較的入手しやすいディスクでしょう。

 → 前の記事を参照

*2001年録音

hr. Vladimira Klanska
vlc. Vladan Koci
vlc. Simona Hecova
pf. Zdenka Hrsel
pf. Martin Hrsel

2001/05/19
Lichtenstein Palace, Prague, Praga Digitals
[PRD 250 167]

 プラハ・グァルネリ・トリオの幻想小曲集 op.885つの民謡風の小曲 op.102、さらにはバボラークのアダージョとアレグロ op.70 とのカップリング。

*2003年録音

pf. ルドルフ・ブフビンダー Rudolph Buchbinder
pf. ウォルフガング・サヴァリッシュ Wolfgang Sawallisch
vlc. ロイド・スミス Lloyd Smith
vlc. Efe Baltacigil
hr. ノーラン・ミラー Nolan Miller

2003/02/09
Verizon Hall and Perelman Theater

 フィラデルフィア管弦楽団の自主制作盤、サヴァリッシュ指揮のシューマン交響曲全集に含まれています。私が買った時は都内の大型店の店頭で買えましたが、今はどうなっているのかわかりません。フィラデルフィア管弦楽団のウェブサイトからオンラインで購入することができると思います。

→ フィラデルフィア管弦楽団自主制作盤の詳細

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※以下は手元にないディスクの一覧です。
ネット上でざっと調べた情報ですので、不備があるかもしれません。

"SCHUMANN Complete Works For Piano 4-hands"

Anthony Halstead, Laszlo Varga, Andras Schiff, Peter Frankl, Olga Hegedus, Vox [CD3X 3001]

 6年前に掲示板でAntonieさんに教えていただいたディスクですが、当時、既に入手できないディスクでしたので、現在入手は困難かもしれません。在庫切れの表示が出ますが、比較的詳細な情報がアマゾン/USにあるので探している人は参考にしてください。

→ アマゾン/US の該当ページを開く

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「ブラームス : ホルン三重奏変ホ長調」(キング)

"Brahms: Trio in Ef Op40;
Schumann: Adagio & Allegro in Af Op70" (Harmonia Mundi)

vlc. ローラン・ピドゥー Roland Pidoux
vlc. フランソ・ミシェル
pf. マリー=ジョゼフ・ジュード Marie-Josephe Jude
pf. ローラン・カバッソ Laurent Cabasso
hrn. エルベ・ジュラン Herve Joulain

 これも在庫切れですが、アマゾンに情報が出ていました。

→ アマゾン/日本 (キング)

→ アマゾン/日本 (Harmonia Mundi)

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ハンブルグ父娘によるピアノ・デュオ版

 手元にあるピアノ・デュオ版の情報です。ほかにも(手元に)あるのかもしれませんが、思い出せませんし探しきれませんでした。

 ハンブルグ父娘(マーク・ハンブルグ Mark Hambourg、マイカル・ハンブルグ Michal Hambourg)による1933年の録音です。ヒストリカルのお好きな方にはぜひおすすめしたいディスクです。


(追記1: 2010.05.01)

YouTubeで聴くことができます。(ファイルが削除されている可能性もあります。2001年のアルゲリッチの室内楽です。)
 
Part 1
Part 2


(追記2: 2010.05.01)

楽譜はここ