伊藤恵 CD「シューマニアーナ」 20年目の完結 シューマンのピアノ曲全曲録音完成!

 シューマンのピアノ曲全曲録音、CD「シューマニアーナ」シリーズを録音してきたピアニストの伊藤恵さんが今年、神戸の松方ホールで録音を完了させました。シリーズの最後となる「シューマニアーナ XII」と「シューマニアーナ XIII」は10月21日、フォンテックより2枚同時に発売されました。 (今なら2枚買って応募すると、「シューマニアーナ20年の道」というDVDがもらえます。)

 これまでシューマンのピアノ曲の全曲録音(作品番号のついているピアノ曲の全曲録音)として知られているものは、

(1) カール・エンゲル
(2) イェルク・デームス
(3) レーヌ・ジャノリ
(4) フランツ・フォーラバー

…くらいなものでしょうか。

 私はエンゲル氏のシューマンのCDを1枚も持っていないため、録音内容の詳細はわかりません(※)。フォーラバー氏については2003年のこのニュースの欄で全集の録音が開始されたらしい…とお知らせしましたが、既に全曲の録音が完了し発売されています。 (最近は箱売りされていますが、箱で買う方がバラで買うよりずっと安いので、途中までバラで買ってしまった私は今とても困っています。)

 シューマンのピアノ曲全集と銘打ったものについては、ざっと数え上げてみても、このくらいしか名前があがりませんから(もしかしたらほかにも録音があるのかもしれませんが私は知りません。完結していない複数の録音プロジェクトについてはカウントしておりません)、伊藤さんのCDのシリーズがいかに貴重なものか、ご理解いただけると思います。アジアで初、日本で初、というか、欧州以外では初? ジャノリ女史に次いで女性で2人目?

 しかし、このような「ギネスブック」的な視点を取らずとも、「シューマニアーナ」は特別なものです。なぜなら、私たちと同じ国・同じ時代に生きている「私たちのピアニスト」が20年もかけてシューマンのピアノ曲をレコーディングし続け、全曲を録音し終わったことは、私たちにとってもとても意味のあることだからです。ウィーンの誰それ、ドイツの誰それ、パリの誰それ…ではなく、日本の「私たちのピアニスト」がシューマンの作品をこれだけたくさん弾いて録音してくれた、そのことに私はまず深い感動を覚えますし、感謝したい気持ちになります。

 「シューマニアーナ」シリーズ中、いずれのディスクに収められている演奏もすぐれたものだと思います。また、「聴いてみたいと思ってCDを探したら見つからなかった」というような珍しい曲も(作品番号がついているものであれば)、これからは伊藤さんの「シューマニアーナ」でたやすく聴くことができるようになるでしょう。

 「シューマニアーナ」の最後を飾った2枚のディスクについて。
 ここに来て「ベートーヴェンの主題による自由な変奏形式の練習曲」やソナタ第3番の "Scherzo. Vivacissimo" のような、作品番号はついていないけれどすばらしい曲が収録されるとは思わなかったので、はじめに収録曲目を見た時には驚きました。また、「最後のひとしずくのうまみ」とでも申しましょうか、これまで録音されなかった私の大好きな曲の数々(夜曲、3つのロマンツェ、"Scherzo. Vivacissimo" もそうだし、なんといってもトッカータ!)がこの2枚で一挙にまとめて放出された感があります。この2枚を繰り返して聴くことが最近の私の日課になっています。シリーズ最後のディスクである (13) が「花の曲 op.19」で美しく、静かに、そして味わい深くしめくくられている点もこのシリーズに「花」を添えているように思えます。…そう考えてみれば、この「シューマニアーナ」はロベルトからクララに捧げられた花束に似ているかもしれません。その意味では、このシリーズは花束のようなピアノ曲集と呼べるでしょう。(*^^*)

■シューマニアーナ XII
 rec. 2007/01/6-10, 04/01, 神戸新聞松方ホール
 fontec / FOCD9318

4つの行進曲 op.76
ベートーヴェンの主題による自由な変奏形式の練習曲
4つのフーガ op.72
スケルツォ op.posth.
  (ピアノ・ソナタ 第3番 第2楽章 初稿)
夜曲 op.23
トッカータ op.7

■シューマニアーナ XIII
 rec. 2007/01/6-10, 04/01, 神戸新聞松方ホール
 fontec / FOCD9319

音楽帖 (アルブムブレッター) op.124
フゲッタ形式の7つのピアノ小品 op.126
3つのロマンツェ op.28
花の曲 op.19

※CD付録のリーフレットの曲目解説はいずれも松本學氏。元都響参事で現九響事務局長の今村晃氏と日本経済新聞社の池田卓夫氏がそれぞれ (12) と (13) に寄稿している。

●伊藤恵 プロフィール(梶本)
●伊藤恵 公式サイト
●シューマニアーナ 全タイトル
●フォンテック

●「シューマニアーナ」完成記者会見(クラシックニュース / 動画)
●関連記事、インタビューの情報

▼ととろおチョイス@おすすめインタビュー記事
松本學氏によるインタビュー
「伊藤恵が語る、シューマン全曲録音への思い」

(PDFファイル)

●記念のリサイタルが行われた。
・ 2007年 10/21(日) / 神戸新聞松方ホール
・ 2007年 11/ 7(水) / 浜離宮朝日ホール

(※)(2008.01.02 追記)
カール・エンゲルのピアノ協奏曲のCDを入手することができました。
→ CDの情報を見る

クララのピアノ協奏曲(室内楽版) ピリオド楽器によるシューマン夫妻の演奏会 - 浜松/東京

 フォルテピアノの演奏家として活躍している小倉貴久子さんと弦楽五重奏団による、ピリオド楽器を用いたシューマン夫妻の演奏会です。

 以下に私がこの演奏会をこの欄でご紹介したくなった動機をざっとまとめてみました。

(1) クララのコンチェルトが演奏会で取り上げられることが稀。

(2) クララのコンチェルトの室内楽版が演奏会で取り上げられることはもっと稀。(昨日のニュース欄でお知らせした川嶋ひろ子さんのインタビューの中で、川嶋さんが2年前に初台の大ホールの公演で取り上げたとおっしゃっていたのを見て私がびっくりしたくらい、稀)

(3) 演奏会で取り上げられること自体、稀なクララのコンチェルトがピリオド楽器によって演奏される…としたら、これは「稀」とかという次元ではない。大事件である。

(4) しかも、ロベルト先生の ピアノ五重奏曲 op.44 と 謝肉祭 op.9 までもがピリオド楽器で演奏される…。

(5) その上、フォルテピアノは意欲的な演奏活動が高く評価されている小倉貴久子さん。

(6) 予告されている使用楽器がコンラート・グラーフ(1820)。

(7) チラシのシューマン夫妻の写真がうちのサイトの壁紙と一緒。

(8) 浜松の鰻は美味。

■2008年 2月23日(土) 14:00開演
 アクトシティ浜松音楽工房ホール

 博物館レクチャーコンサート/静岡文化芸術大学文化芸術セミナー
 静岡文化芸術大学の室内楽演奏会3

■2008年 3月2日(日) 14:00開演
 第一生命ホール
 TAN's Amici Concert

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クララ&ロベルト・シューマン
愛、輝きと優しさ
クラヴィーア・アンサンブル グラーフのフォルテピアノとともに
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(出演)
(フォルテピアノ) 小倉貴久子
(ヴァイオリン) 桐山建志
(ヴァイオリン) 藤村政芳
(ヴィオラ) 長岡聡季
(チェロ) 花崎薫
(コントラバス) 笠原勝二

(曲目)
C・シューマン / ピアノ協奏曲 イ短調 op.7 (室内楽版)
R・シューマン / ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
R・シューマン / 謝肉祭 op.9

※開演前に小岩信治氏によるプレトークあり。

チラシ(画像)

公演チラシ (PDF / 897 KB)

●浜松公演 予約・問い合わせ
浜松市楽器博物館 053-451-1128
(チケット発売:12/1)

●東京公演 予約・問い合わせ
トリトン・アーツ・ネットワーク チケットデスク 03-3532-5702

●詳細 (小倉貴久子さんのウェブサイト)

●アクトシティ浜松音楽工房ホール
※アクトシティ浜松のトップページ → 施設のご案内 → 研修交流センター (詳細画面へ) → 音楽工房ホール の順でクリック

●第一生命ホール

●当サイト内の関連情報
ととろお三籟日記 「浜松市楽器博物館探訪」

●2008.02.25 追記
浜松公演の「うな電」を伊藤さんの「A Plaza of Clara Schumann」の掲示板に投稿しました。
http://clara-schumann.net/forum_clara/

●2008.03.02 追記
公演終了後の簡単なまとめ記事を当サイトのニュースに投稿しました。

川嶋ひろ子さんのインタビューとクララのCD 「レッスンの友」(2007年9-11月号)

A Plaza of Clara Schumann」の伊藤さんの掲示板でも話題になりましたが、ピアニストの川嶋ひろ子さん演奏によるクララ作品のCDが発売されます。また、このCD発売に合わせて「レッスンの友」の9月号~11月号に、川嶋さんの連続インタビューが掲載されています。長年、シューマン夫妻関連のコンサート情報をあれこれ調べる中で川嶋さんのお名前を拝見する機会がありましたので、どのような方なのだろうと思っていましたが、3号にわたるインタビューを拝見して、そのお話の奥深さ、豊富な知識、その誠実な語り口に感銘を受けました。雑誌のインタビュー記事としてもとても丁寧に作られていますのでクララに興味のある方はぜひとも目を通されるとよいと思います。

■インタビュー掲載の情報

●「レッスンの友」 2007年9月号 pp.76-78
 第45巻第5号* (通産528号) *ママ

インタビュー 「ピアニスト 川嶋ひろ子さん」

 「クララ・シューマンの名曲集をレコーディングした川嶋さんに訊く。クララのいろいろな面を聴いて欲しいと思って、性格の違った曲を揃えました。」

●「レッスンの友」 2007年10月号 pp.80-83
 第45巻第10号(通産529号)

インタビュー 「ピアニスト 川嶋ひろ子さん」

 「クララが演奏して作品を広め、ロベルトの力を示し続けたその功績は非常に大きいのです。」

※巻頭にカラー写真あり

●「レッスンの友」 2007年11月号 pp.53-55
 第45巻第11号(通産530号)

インタビュー 「ピアニスト 川嶋ひろ子さん」

 「クララの生き方には、現代の女性も学ぶべき所がたくさんあると思います。」

■レッスンの友
http://www.lesson.co.jp/
http://www.lesson.co.jp/lesson.html

■川嶋ひろ子さんの公式サイト (CDの試聴可)
http://www.ne.jp/asahi/h.kawashima/c.schumann/

■CD情報
「川嶋ひろ子 Plays クララ・シューマン」
BW-1303D (コロンビア) 2007.11.11発売

ロマンスと変奏 op.3
4つの性格的小品 第3番 「ロマンス」 op.5-3
音楽の夜会 第2番 「ノットゥルノ」 op.6-2
音楽の夜会 第3番 「マズルカ」 op.6-3
スケルツォ op.10
3つのロマンス 第1番 op.11-1
ピアノ・ソナタ ト短調
3つのプレリュードとフーガ 第1番 op.16-1
ロベルト・シューマンの主題による変奏曲 op.20

(録音:2007.03.29, 30 / キラリふじみ大ホール、埼玉)

■CD問い合わせ先
ハラヤミュージックエンタープライズ
03-3587-0218
http://homepage2.nifty.com/harayamusic/

NHK「ぴあのピア」 シューマン再放送 「まとめてシューマン」

NHK「ぴあのピア」のシューマンの回が一挙に再放送されるそうです。放送予定は以下の通り。

●2007年 11月19日(月)
NHK・BShi 午前01:15~03:45
 「ぴあのピア」 ~ 「まとめてシューマン」

NHK「ぴあのピア」 ウェブサイト

「アンダンテと変奏曲」 (室内楽版) 上野で瀬尾久仁・加藤真一郎のピアノデュオ

 なかなか実際の演奏を聴く機会のない「アンダンテと変奏曲」の室内楽版(ピアノ2、チェロ2、ホルン1)をドイツ在住の若手ピアノデュオが12月に東京文化会館で取り上げるそうです。

 出演が予告されている演奏家については、私は演奏会で聴いたこともないし詳しいこともよくわかりませんが、彼らのホームページで見る限り、ヨーロッパで活躍をはじめている、とても期待されているデュオのようです。残念ながら、私はこの日、別の予定が既に入っているので出かけることができませんが、「聴きたかったー!」という気持ちをこめて、彼らの演奏会の予定をここにご紹介しておきたいと思います。

2007年 12月3日(月) 19:00開演
東京文化会館(小ホール)
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瀬尾久仁&加藤真一郎ピアノデュオ・リサイタル
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(ピアノデュオ) 瀬尾久仁 & 加藤真一郎
(チェロ) 室野良史、松浦健太郎
(ホルン) 阿部麿
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シューベルト / 自作主題による変奏曲 D813
レーガー / モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ op. 132a
三善晃 / 響象 I & II
シューマン / :アンダンテと変奏曲
        (2台のピアノ、2つのチェロおよびホルン)
ブラームス / シューマンの主題による変奏曲 op.23
レーガー(アルフォンス・コンタルスキー編曲)
   / モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ op.132より 第8変奏
    (2台ピアノ、2チェロ、ホルン) [世界初演]

●予約・問い合わせ
東京コンサーツ 03-3226-9755

●詳細 (ピアノデュオ オフィシャルサイト)

●東京文化会館

●シューマンおたく学会ニュースの「アンダンテと変奏曲」の話題